[共テ2025本試験] 物理 第4問

物理

磁場の中で導体棒が動くときの誘導起電力、その起電力を電源とする直流回路の問題でコンデンサーやソレノイドコイルを含む回路、発生するジュール熱などが問われています。

誘導起電力の原理、コンデンサーソレノイドの計算、ジュール熱の計算などの標準的な問題ですが、問2や問6の過渡的な現象の問題は公式の暗記だけでは対応できません。コンデンサーやソレノイドの特性を理解していないと正解できないでしょう。

問1

磁束密度$B$の中で速さ$v$で動く、長さ$l$の導体棒に発生する誘導起電力の大きさは、公式のまま$vBl$です。

またこの回路には電池がないので、Sを閉じた直後の電流の向きは導体棒に発生する誘導起電力の向きと一致します。その向きは以下のようなさまざまな方法で決めることができます。

[解法1 左手の法則]

下図のように左手を設定すれば、起電力の向きは親指の向きとなります。人差し指は磁場、中指は導体棒の動く向きです。起電力の向きはb→aとなります。

[解法2 コイル内を通過する磁束の変化]

導体棒が右に動くと回路(コイルに相当する)の面積が広がり、そこを貫く磁束が増加します。コイルはその増加を抑制する向きに誘導起電力を発生します。

ここでは紙面手前から裏に向かう向きに磁場を発生させるよう反応するので、下の図では右ねじ(または右手)の法則により右回りの電流を流すような起電力が発生します。導体棒の起電力はb→aであることがわかります。

[解法3 ローレンツ力]

解法1の左手と同じように左手を使うと、親指は荷電粒子にはたらくローレンツ力の向きを表します。ここではb→aの向きに親指が向きます。

ところがこの場合は荷電粒子が導体棒内の自由電子でその電荷はマイナスだから、親指と反対向きにローレンツ力がはたらきます。したがって導体棒内の自由電子はa→bの向きに移動しようとします。

その結果、導体棒はb側がマイナス、a側がプラスという起電力を持つことになります。これにより導体棒にはb→aの向きの電流が流れます。

正解:6

問2

外力$F$を加えて導体棒の動きを等速直線運動にするので、$F$は導体棒が磁場から受ける電磁力の大きさと同じものとなります。

電流はb→aなので、フレミングの左手の法則により電磁力は左向きです。したがって外力$F$は右向きで、その大きさは$F=BIl$です。$F$は電流に比例していることがわかります。

次に電流の時間変化を追います。Sを閉じた直後は、コンデンサーは抵抗ゼロの導線となるので、その電流はある値となります。

その後コンデンサーの充電が進むと電流が徐々に低下し、充電が完了すると電流はゼロになります。そのようなグラフは➀です。

正解:1

問3

回路に出入りするエネルギーの保存則を考えます。

入ってくるエネルギーおよび仕事は、外力による仕事$W$のみです。

回路から出ていくエネルギーはジュール熱$J$です。

その差は回路内に残るエネルギーとなります。それはコンデンサーの静電エネルギーやコイルに蓄えられるエネルギーなどが対応します。この問題ではコンデンサーのエネルギー$U$です。

これらのエネルギー間には以下のような関係式があります。

\begin{align}W=J+U\\[6pt]
\therefore W-J-U=0
\end{align}

19の正解:4

コンデンサーに蓄えられた電荷$Q$は、$Q=CV_1$です。ただし$V_1$を導体棒の起電力とします。

導体棒は電池であるかのように振る舞い、その導体棒がした仕事は電気量$Q$を$V_1$という高さまで持ち上げるものなので、$Q\times V_1$で表されます。そしてこの$QV_1$は外力$F$の仕事によってもたらされているので、

\[W=QV_1=CV_1^2\]

となります。

一方、コンデンサーに蓄えられたエネルギーは公式により、

\[U=\dfrac{1}{2}QV_1=\dfrac{1}{2}CV_1^2\]

です。これらを19の式に代入してジュール熱を求めると、

\begin{align}
J&=W-U\\[6pt]
&=CV_1^2-\dfrac{1}{2}CV_1^2\\[6pt]
&=\dfrac{1}{2}CV_1^2
\end{align}

となります。

20の正解:2

問4

Sを閉じて十分時間がたつと、コンデンサーの充電が完了し電流がゼロになっています。このとき導体棒は等速直線運動を続けているでしょう。

ここでSを開き、導体棒を手で止めます。コンデンサーは充電されたままです。

ここからSを閉じるとコンデンサーの放電が始まり、導体棒に電流が流れて、導体棒が磁場から電磁力を受け動き出します。

充電完了時のコンデンサーは図のように下の極板にプラス、上の極板にマイナスの電荷があります。したがってSを閉じると電流は反時計回りになり、導体棒ではa→bの向きに流れています。

その電流にしたがってフレミングの左手の法則を適用すれば、導体棒には右向きの電磁力がはたらくことがわかります。つまり導体棒は右に向かって動き出します。

正解:6

問5

Sを閉じて十分時間がたつと、図3のように電流は一定値となります。

コイルは電流に変化があるとその変化率に比例した自己誘導起電力を発生します。

したがって電流の変化がない状態では変化率がゼロなので、誘導起電力もゼロです。

正解:7

問6

問2と同じように回路を流れる電流を追っていきます。

Sを閉じる直前直後で、導体棒は$V_2$という起電力を持つ電池となっています。

Sを閉じた直後はコイルに急激に大きな電圧がかかるので、コイルはその電圧と同じ誘導起電力を発生し、電流を流さないように振る舞います。したがって初期の電流はゼロであり$F$もゼロです。

時間がたつとやがてコイルは電流が流れるのを許すようになり、最後は一定の電流が流れたままとなります。したがって力もある一定の値になります。そのようなグラフは➁です。

正解:2

問7

$t=0$とはSを閉じた直後のことです。

このときコイルが発生する誘導起電力$V$は電流の時間変化に比例しており、自己インダクタンス$L$を使って

\[V=L\dfrac{dI}{dt}\]

のように表せます。ここで右辺の微分の部分は図3における$t=0$での接線の傾きを表しており、それが$a$なので、

\[V=La\]

です。そして$t=0$ではこのコイルの誘導起電力が導体棒の起電力と等しくなっているので、

\begin{align}
La=V_2\\[6pt]
\therefore L=\dfrac{V_2}{a}
\end{align}

となります。

正解:4

この問題への対策

磁場の中で導体棒が動くときの起電力の問題は共テでも頻出事項です。ここでは解法を3つ紹介しました。どの方法でも考えることができるようにしておきましょう。

過渡現象のグラフは急な折れ線になることはあまりないので、問2も問6も➀か➁が正解であろうという予想はできます。あとは時間とともに$F$が増えるかどうかという判断になります。グラフ選択の問題では消去法も有効です。

全体として、ただ公式を暗記しているだけでは対応しきれない問題となっています。公式の導出を確認しておきましょう。また問題集の基本問題で、なぜその公式が使えるのかを考えながら取り組む練習を積んでおくのが効果的です。

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